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*ワタミの渡邉美樹烈伝

book memo 20130706 235359
ワタミグループは確かに色々と叩かれる面もあるが、渡邉美樹自身はとんでもないカリスマなのである。高杉良が書いた小説「青年社長」にその伝説の数々が書かれているので、幾つかその渡邉美樹烈伝を抜粋しよう。

  • 明治大学時代、明治大学横浜会を率いて様々なイベントを成功させる。最も大きなイベントとして、チャリティーの学生コンサートを主催。150人の学生を組織し、ゲストに森進一を召喚し、集客1万2千人。500万以上を寄付。
  • 卒業前に日本や海外を旅行し、外食産業を立ち上げることを決意。大学卒業後、会社の仕組みを覚えるためミロク経理に入社、経理などを覚えて半年で辞め、開店資金を貯めるために高給の佐川急便のセールスドライバー(SD)になる。
  • 1982年当時、佐川急便のSDの労働環境の劣悪さは凄まじく、一日の労働時間は20時間に近いと言われていた。午前6時出社で深夜2時過ぎまで働くこともザラ。ちなみに初日は6:00-2:30労働。休みは月2日。1日で脱落する人が多く、補充のため毎月入社式がある。ちなみに大卒で佐川SDをやったのは渡邉が初。大卒に対するイジメも凄まじく、少しのミスで丸坊主にされたことも。激務とぎっくり腰で医者から2週間療養を命じられたことも。
  • ミロク時代、会社の近くのレストランのウェイトレスの洋子に一目惚れ。猛アタックするも人妻だと判明。それでもアタックしプロポーズもするが当然振られ、それがミロクを半年で辞める要因となる(最初は1年は働き、学んだ分は恩返しをする予定だったらしい。1年で恩返しができるという感覚も凄いが)。しかし1年後、洋子はその激しいプロポーズが忘れられず離婚、渡邉と再婚する。
  • 1年間佐川SDで300万の資金を貯めた後、渡邉は高級クラブでボーイ見習い、居酒屋でバイト、料理店の厨房で働き、外食産業を学ぶ。洋子もホステス等で働くが過労で急性腎盂炎となり1週間入院。
  • 24歳で有限会社を設立。外食産業を立ち上げるにあたり、大学時代の盟友でつぼ八高円寺北口店店主に抜擢されていた黒澤を引きぬく。明治大からつぼ八へ就職など、通常考えられないコースであり、この産業スパイとも言える就職自体が渡邉の外食産業立ち上げ計画の一つだった。
  • つぼ八の石井社長、この人も北海道の八坪の居酒屋から全国チェーンを立ち上げた立志伝中の人だが、幹部候補の黒澤を引き抜く事に抵抗し渡邉と会うがこの時に渡邉のことを認める。渡邉は既に立地や業態を定めていたが、石井にそのビジネスは必ず失敗すると看破され、先ずはつぼ八のフランチャイズから始めることを勧められ、そうすることを即決。
  • 銀行からの融資で高円寺北口店を5000万で買い取り。「お客様のために奴隷になったつもりでやれ」。半年で売上を倍、利益を10倍にする。日本で一番儲かっているつぼ八となり、つぼ八グループ内で数度講演する。
  • 規模拡大のため、信頼出来る人材を登用する。日産自動車に勤めていた学生時代の盟友、沼田を引き抜こうとする。沼田は渡邉に付いて行くことを決意し辞意を表明。両親兄弟、会社の上司同期に猛反対される(当たり前だ)。沼田は親子の縁を切られようとも渡邉に付いて行くと表明するが、最終的に恋人の反対が強く引き抜き失敗。
  • しかし別の優良メーカーに勤めていた呉の引き抜きには成功。社長賞が内定しているような若手のホープだったため、部長が呉の実家の富山まで行き親を説得するなど大騒動になるが、引き抜き成功。
  • 他にも高円寺北口店のバイトの大学生を次々と社員に登用。つぼ八本部の経理課長だった加藤の引き抜きにも成功するが、ガムを噛みながら接客するなど態度が悪くバイトからの昇格組の笠井の鉄拳制裁により退職(渡邉は加藤より笠井を選んだ)。
  • こうして人材の確保を進めつつ、つぼ八大和店などのフランチャイズ店を拡大する。
  • 渡邉はお好み焼きチェーンを関東に立ち上げることを思いつき、産業スパイとして黒澤を関西に送り込む。ビジネスホテルに泊まりながら、身分を隠してチェーン店のバイトをして、レシピやソースの仕入れを完全にコピーし、それを元に「お好み焼HOUSE唐変木」を立ち上げる。このために「株式会社ワタミ」を設立。
  • その後日清製粉との提携で資金力と信用を得て、唐変木の多店舗化、さらにお好み焼き宅配のKEI太の立ち上げ等と多店舗FC展開に成功。その後、資本比率を巡って日清と対立し資本提携解消。
  • そして和民の立ち上げと、業態が衝突するつぼ八との決別。安定した稼ぎ頭だったつぼ八FCから撤退する(13店を運営していた)。しかし和民は成功しチェーン展開は順調に進む。
  • 店頭公開を目前にしつつ、売上が落ち始め不良債権化が進んでいたお好み焼き事業から撤退。このとき、渡邉の一番弟子と言われ、お好み焼き事業を統括していた笠井が辞める。
  • そして会社設立から10年と少しで店頭公開、2部上場。その2年後の2000年に1部上場。一代で1部上場、売上数千億円の企業を作り上げ、なおも成長中。

読めばわかるけど、ワタミグループ総帥の渡邉美樹は、もう学生時代から行動力、統率力、決断力が図抜けていることが分かる。優良企業に入っている友人を「居酒屋立ちあげるから来ないか」と誘い「こいつについて行かなければ一生後悔する」と思わせて引きぬいてしまうカリスマ性。そして、人間の限界に挑み続けるかの如く猛烈に働く精神力と体力。なんつーか完全に超人である。そして目標のためには対立を恐れない。引き抜きのときもそうだし、お世話になったつぼ八や日清製粉とも、自分の目標(夢)に沿わなくなれば相手が如何に巨大だろうと和ではなく対立を選ぶ。他事業への進出も積極的であると同時に、撤退の判断も早い。経営者としては正直、凄いと言わざるを得ないだろう。

ただ、自分はとてもじゃないけどこの下じゃ働きたくないというか、働けないとも思ってしまう。小説の中にも脱落者は多く出てくる。しかしこの労働価値観は成長企業においては決して間違っているわけではない。例えば、創業当時バイト上がりで就職し幹部に成った人もいる。猛烈に働いてもそれを超える見返りが十分にあったのだ。これは成長組織特有の価値観であり、日本の高度成長期の猛烈社員や、戦国時代の豊臣秀吉軍団とも重なる。しかし、その戦略は成長しているから成り立っているのである。高度成長期を終えた日本経済がおかしくなった事や、秀吉が全国統一した後にも成長戦略が止まらず無理に朝鮮へ出兵し失敗したことを見れば、成長を終えたら新しい組織規範に移行しなくては問題が起きることは容易に想像できる。ワタミを含め日本の外食産業市場は縮小傾向であり、もはや以前の猛烈に見合う見返りはない。それなのに以前の労働価値観を維持しているからブラックと呼ばれてしまう。

ただ、ワタミ自身は介護や宅食などの事業多角化を進めており、トータルでは成長企業と言えるところが難しくややこしいところか。あとさ、このワタミの宣伝を兼ねたような小説を読んでも、人としてどうかと思うところは結構ある。普通、洋子さんの旦那だったらブチ切れてるよな。迷惑すぎるだろう。会社をすぐ辞めるのもどうかと思うよね。

ということで、最近渡邉氏はブラックNo.1と言われたり参院選に出馬したりネット界隈を騒がしているが、今後どうなるのか、彼の豪腕と対立を恐れないブレなさが日本に何を引き起こすのか、非常に目が離せないのである。