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*異邦人、水いらず、など

book 20111023 002832

サルトル - 水いらず

義父が酒を飲むと語るのが、必ずサルトルの実存主義なのである。だから、話の種に一冊読んどくか、という感じで有名な「嘔吐」が読みたかったんだけど、古本屋になかったので代わりに購入。短中編集だった。

一言で寸評していくと、性に正面からぶつかれない人たちの話、ギロチンにかかる寸前の男の話、妄想に生きる男とそこに引きずり込まれる女の話、無差別殺人を目論む気が違ったヘタレの話、人が人格を形成する話。
まとめると、サルトルは頭がおかしい、ってことだ。よくもこんな気の違った錯乱した話ばかり書けるものだ。

最後の中編に関しては、ここの書評に共感した。自己を捨て完全に社会に適合するのか *0 、壁を作り自分の世界に引込もるのか、或いはプロクシを立て社会とは特定のポートとしか繋がらない代わりに自己を守るのか。自分の社会との接し方を振り返ると面白いかもしれない。

カミュ - 異邦人

空気を読めない死刑囚が悟りを開く話。
不条理がテーマらしいのだが、不条理こそが世の常だし、反面実際人を撃ち殺している以上死刑は合理的と言えるし、言うほど異邦人でも不条理でもないと思った。自業自得である。

しかし、自分に正直に生きてそのためある種異邦人として死が定められた彼は、死刑の前夜に、完全な自己肯定と幸福感を得た。読者もそれに同調しカタルシスを得られる仕組みなのだが、それが狂気なのかある種の人生の解なのか。いずれも真か。

とりあえず、読み切り易いしお勧め。しかし、フランス文学はサルトルといい、こんなんばっかりなの?フランス人の脳には(良い意味で)虫が湧いているのではないかと心配だ。

山本周五郎 - 彦左衛門外記

友達(文学少年というか文学中年)から、山本周五郎読め、と激賞されたのでまずは薄っぺらいのから読んでみた。
寸評すると、時代劇ドタバタコメディ。どうやら、もっと代表作を読まなくちゃいけなかったようだ、と反省しつつもこれはこれで面白く読了。筆力を感じるね、これだけハチャメチャやりつつ時代小説として軽々と成立させるあたりに。樅の木も買ってあるんで読む。

ちなみに、彦左衛門は天下の御意見番として時代劇にもよく取り上げられる有名な人らしい。知らんかった!

佐伯多門 - スピーカー&エンクロージャー百科

なんとなくサブウーファーが作りたくなって、会社帰りにコイズミ無線に立ち寄ったものの、いきなりユニットを買うのも馬鹿だな、と思い留まりつつも、何か買わないとと思って手に取ったのがこの本。これが名著だった。

百科というだけあって、歴史からユニット、エンクロージャー、自作の仕方、計測方法と網羅的に書いてある。しかもかなり詳細だ。スピーカーはグラハムベルの電話から始まる念の入り用。しかも百科事典的な側面を持ちつつも、1P目から順に読める楽しさと流れの良さも兼ね備えていると来たものだ。ほんと、オーディオは奥が深いな、と感嘆すると共に、相変わらず自分は何ひとつ分からずに何かをやろうとしているな、と笑えてきた。

ちなみに、サブウーファー建造計画は嫁の「それは絶対に許さない」の一言で中止となりました。合掌。
*0 : 確かに、それは一番出世する道である

11.10.24 23:37 owotake

この中じゃ異邦人しかよんでないけど、かなり的確でワロタ>空気を読めない死刑囚が悟りを開く話
嘔吐が未だに積ん読状態のヘタレが言えたもんじゃないけど、マンディアルグって人の短編はほんとに湧いてたよ。
薦めないけど是非。
11.11.03 20:51 mtm
マンディアルグ、ちょっと調べたけど面白そうじゃん!
樅の木、もう少しで読了予定。
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