山本周五郎 - 樅ノ木は残った
こりゃ傑作だ。司馬遼太郎が歴史から真実をもぎ取る小説家とすれば *0 、山本周五郎は歴史から情を絞り出す小説家とでもいうべきか。けど決定的に違うのは、山本周五郎は良い意味で大衆小説家だということだ。喜怒哀楽の要所を押さえた展開は速く、娯楽としても一級品だ。日本人なら誰でも読んで楽しめるような普遍的な間口の広いエンターテイメント性がある。
しかし、読後違和感が残った。原田甲斐、彼の戦略はそもそも大局的に無理があったとしか思えない。だって、これじゃああんまりだろ。浮かばれなさすぎる。この虚無感こそがこの小説の真髄なのかもしれんけど。
しかし、読後違和感が残った。原田甲斐、彼の戦略はそもそも大局的に無理があったとしか思えない。だって、これじゃああんまりだろ。浮かばれなさすぎる。この虚無感こそがこの小説の真髄なのかもしれんけど。
山本周五郎 - さぶ
これも傑作だった。やっぱ人間、情に生きてるんだよな。いくら、人間の脳や意識は理論上は計算機でシミュレート可能だと信じて止まないイーガン厨の僕であっても、情というバグだらけの不安定なOSで動いていることには変わりない。そういう意味で、泣かせてくれる良い作品は対人exploit codeと言える。
グレッグ・イーガン - プランクダイブ
というわけでイーガンの短編集。他の大作の下敷きとなった話もあるので、少し損した気分もするけど、良作揃いなので問題なし。イーガンの小説の魅力は彼が如何にブっとんだ概念を頭に持っているか、その片鱗を知ることなのではないかと思う。
そういう意味ではこの本では、生命が情報化され複製や変更が容易になったときの命への考え方の変化、がカルチャーショックだった。最初に出てくる「シミュレーション上の生命を消すことを本気で罪と感じる人」とか、プランクダイブの「真理を求めるために死を全く恐れない人」とかね、最初理解に苦しんだ。
自分の命がいくらでも複製可能で、どこにでも転送可能になったとしたら、自分は自分の命の価値をどう感じるのだろうか。DVDのメディア1枚くらいかな。
そういう意味ではこの本では、生命が情報化され複製や変更が容易になったときの命への考え方の変化、がカルチャーショックだった。最初に出てくる「シミュレーション上の生命を消すことを本気で罪と感じる人」とか、プランクダイブの「真理を求めるために死を全く恐れない人」とかね、最初理解に苦しんだ。
自分の命がいくらでも複製可能で、どこにでも転送可能になったとしたら、自分は自分の命の価値をどう感じるのだろうか。DVDのメディア1枚くらいかな。
ロバート・A・ハインライン - 夏への扉
えらく古いSFを読んでしまった。1956刊行。1956年の人が思い描く2000年の未来都市。それを2011年の僕が読む。それ自体が何だかSFチック。
それはさておき、Back To The Future的爽快感の味わえる良作でした。前半は古くささと浮ついた翻訳に若干辟易しましたが、後半はそれがいい味と思えるくらい世界観にハマります。
それはさておき、Back To The Future的爽快感の味わえる良作でした。前半は古くささと浮ついた翻訳に若干辟易しましたが、後半はそれがいい味と思えるくらい世界観にハマります。
*0 : 異論はありそうですが
高度成長期の社畜のバイブルとかんがえると、また違った視点が開けるかと。
これをベースに、ダウナー系が虚空遍歴、アッパー系がながい坂ですかね>next周五郎
>プランクダイブ
面白くよんだ。たいがい同意だけど、情報的存在になったら物理的実在に興味なくなるかも
ってのも含めて、なんか新鮮さがたりない気もした。んーー。
>夏への扉
スターシップ・トゥルーパーズの原作者の、至高の読了感の名作ですな。
確かに迷訳。メイドロボならぬ「ぶんか女中」器とかもはやなにそれとしか。
社畜のバイブルだったのか!なんだか凄く納得できるw
戦国時代だったらこういった自己犠牲的戦略が期待値が高かったかもだけど、
時代変わればバカを見るという感じか。
社畜も昔はモーレツ的な意味があった気がするけど、最近はフリーライダー的意味が強い気がする。
>プランクダイブ
イーガンのは最新の短篇集というわけでもないから、しょうがないかな、と思った。
ディアスポラの枠を超えたSFは出ないのかなー。
>夏への扉
SFとしてどうかというより話が面白かったね。他のも読んでみる。
HMZ-T1がすげーほしい今日この頃。久々に未来を感じさせるナイスアイテム。
一日中かぶってたらちょっとイーガン世界に近づける!わけないか。