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*虚構の城、アリゾナ無宿など

book 20121011 231501

高杉 良 - 虚構の城

サラリーマン残酷物語。
主人公は、画期的な技術を開発し、人望もある石油会社のエリートエンジニア。
社長からも表彰され順風満帆の人生にしか見えないが、それに反して文章から漂う重苦しい空気が不安な気持ちにさせてくれる。案の定、そのあと酷いことになるのだった。

彼は、会社やその人間関係、女や妻、他社の引き抜き工作等に翻弄され、人生は最初の安定したサラリーマン人生のレールの上を大きく脱線していく。色々思うことはあるけど、個人的に得た結論は「悪妻は全ての災いに通ずる」か。

あまりに面白いので一気に読んでしまったが、これは金融腐食列島の高杉良のデビュー作なのだった。一作目からここまでリアルかつ面白い作品を産み出すとは恐るべき才能だと、読み終えてからまた顎が外れた。

逢坂 剛 - アリゾナ無宿

妻の友達の親が逢坂剛らしい。てことで話のネタに買ってみた。
意表を突かれた冒険活劇。西部劇なのに主人公が女の子で、ガンマン以外にも何故か刀を持った日本人が出てくるなど、本格的なんだかネタなのか分らない展開が面白い。
テンポよく一気に読了。
娯楽小説としては満点に近く、続きがあったら読みたい。
ただ、気持ちよく読める代わりに重みはない。ライトノベルに近い。

逢坂 剛 - スペイン灼熱の午後

逢坂剛を買ったもうひとつの理由は、少しスペイン関係の知識を面白く仕入れるのに良さそうだったから(彼の作品は何故だかスペイン関係が多い)。
これはスペインを舞台にした冒険活劇だが、 スペイン内戦 に関する描写も入る。これが結構面白い。本編はかなりご都合主義のハリウッド映画的展開が目立つのが残念。もっとも、最初に謎が提示されそれを追っていく構成のため、多少の荒削りさが鼻についても展開が気になって読んでしまうわけだけど。



次は、逢坂剛のスペイン本で評判の高いカディスの赤い星を読んでみようと思う。


てかね、 スペインの歴史 って凄いよね。
ローマの支配から、イスラムの支配、そこからの復活(レコンキスタ)で 太陽の沈まない国 、つまり世界的な覇権国家となるけど、その後ヨーロッパ中を敵に回し疲弊し、無敵艦隊はイギリスに敗れて世界中の覇権を失い、フランスに支配され、フランスから支配を取り戻すが内戦状態になり、右派フランコが独裁政権を確立し第二次世界大戦後もファシズム体制を維持するが、その死後民主化した途端に左派政権が誕生、現在はEUバブルとその崩壊を経て最悪の経済状況に陥っている。こんな波乱万丈な国が他にあるだろうか?

最近になって世界史の面白さが分ってきた気がする。