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*流山市案山子寸評 2012年版

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流山市は田舎である。
よって、夜は暗い。

その夜道を狭い道路を対向車に気をつけながら進む。
家はもうすぐだ。
コンビにのある交差点に差し掛かる。

ヘッドライトが道路と田んぼを照らし出す。
そこで突如として浮かび上がる無数の不気味な人影!

妻はパニックを起こし悲鳴を上げて泣き出し、
男はハンドルを切り間違え事故を起こす。


というのはウソで大袈裟だけど、とにかく、うちの近くの交差点に
不気味な案山子が多数あることを知ったのが、去年の夏。

夜見ると不気味の一言だけど、しかし昼間見ればなんてことはない、案山子だった。
どうやら近くの小学校で作ったものらしい。
一体一体に標語まで付けてある。
よく見れば結構可愛げもあるし、造形も個性的で面白いではないか。

近所の珍名物として、写真に収めようと思ったのだけど、
去年は気づいたらシーズンオフで撤去されていた。

ということで、今年は忘れる前に写真を撮ってきた。



案山子へ向かう道。
夏の空。



畑を守るように配置される案山子。

これを撮っている最中に、小学校へ向かう母子が通りかかり子供が
「ねえ、なんでこの人写真とってるのー?」
「知らない」
という会話有り。

まあ、確かに怪しいよね。普通、案山子の写真撮らないよね。


磔にされたキリストのような風格漂う案山子。
「自転車で 信号むしは 事故のもと♥」


顔が見えないせいか、わりと人間ぽく見える。
「元気よく あいさつのわを 広げよう!」


背丈が足りず、田んぼに陥没している。


色々と崩壊しているが、


正面からみると割とふつう。
「よこならび 気がつかないと 事故のもと」


珍しく不気味さが無く、可愛さが表現できている。
作品としてまとまりがあり完成度も高い。
「目を合わせ おれいをいおう ありがとう」


田舎のチーマー風。残念ながら標語なし。


シンプルだけど、社会生活を営む上で重要なメッセージ。
「かんしゃをね すぐにいおうよ ありがとう」


表情、特に鼻が気になる。
「笑顔でね はっきり言おうよ ありがとう」


正直、これが一番衝撃的だった。
顔に見えそうで見えないような、見えるような。


今にも道路に飛び出しそうな勢いあり。
「はっきりと 元気な声で こんにちは」


調べてみたら、案山子作りの様子がネットに上がっていた。

かかし作り 平成24年7月19日(木)
http://www.nagareyama.ed.jp/ygmnmsyou/H24/1gakki/7gatu/kakasi/kakasi.html

八木南小で全校児童167人がかかし作り 地区社協の協力で30体が完成
http://www.city.nagareyama.chiba.jp/top/jouhoukan/1007/kakasi.htm

地域の方と児童が触れ合いながら 八木南小で地区社協主催のかかし作り
http://www.city.nagareyama.chiba.jp/top/jouhoukan/0807/kakasidukuri.htm


どうやら、案山子という存在は鳥獣害を防ぐという本来の目的のみならず、その製作過程における教育や地域の交流が、大きな目的となっている模様。
確かに、されど案山子といえど奥は深い。

美術的なセンスから、真夏の屋外での長期放置に耐えられる構造という工学的な視点、鳥獣への影響力の科学的立証、設置依頼主の要求分析から要求仕様定義、依頼主や下請けや協力者、地域との友好・信頼関係の構築、へのへのもへじの様な伝統的造形と現代的造形との対立を解決する政治的な手腕、それらが少なくとも必要だ。これに加え、標語もあるのだから、文学的な素養やセンス、自分のポリシーの明確化、筆跡の美しさ、なども要求される。

最近の小学校はなんと高度な教育を行っているのだろう。
と思いつつ8月が終わる。