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*テキサスホールデム ドミネイト一考

poker tech 20131208 131652
テキサスホールデムに関する本やブログを読んでいるとよく「ドミネイトされにくい手をプレイしろ」と書いてあります。今日はそのドミネイトについて自分なりに調べてみました。

ドミネイトの定義

ポーカーの高速道路とけものみちによると
「もともとの言葉の意味は、「支配する」。転じてポーカーでは、圧倒的優位な状態にあることをいいます。
例えば、AQとA3ではAがヒットしてもキッカー負けしてしまうので、A3は「3がヒットして」かつ「Qがヒットしない」という極めて稀な状況下でしか勝つことができません。勝率は20%以下です。」

Texas Hold'em Poker Dictionaryによれば「A hand that is drawing to three or fewer outs against another hand. Ex. AQ is dominated by AK.」とあります。アウツが3枚以下の場合をドミネイトされていると定義しています。アウツ3枚をショーダウンまでに引ける確率は28%ですから *0 、勝率30%を切ればドミネイトされている、と言って良さそうです。

(追記)
一般的には単にキッカー負けしていることをドミネイトと言うことが多いため、ここで定義した勝率によるドミネイトは特殊です。

ドミネイトされているもの、されていないもの

ドミネイトされている例

  • AK vs Ax: 上の例にあるように、AKに対してAQは勝つためには残り3枚のQを引きかつKを引いてはいけません。反対にAKはKを引くかQさえ引かなければ勝ちです。AKは(AA以外の)Axを全てドミネイトしています。
  • AK vs Kx: Aをキッカーと考えればAKは(KK以外の)Kxをドミネイトしていると言えます。AKが強いのはAxとKxという参加率の高い手を全てドミネイトしているからと言えそうです。
  • AA vs その他ポケット: 2枚のアウツを引き当ててセットを完成させなければAAに勝てないため、キッカーより強くドミネイトされています。
  • AT vs JJ: ATはAを引かない限り負けますので、ドミネイトされています。
  • AhKh vs 9h8h: フラッシュに関してドミネイトされています。スートドミネイトと言うようです。

ドミネイトされていない例

  • AK vs QJ: QJはQかJを引けば良いのでアウツが6枚、これはドミネイトされていません。ただアウトは6枚あってもAかKを引かれたら負けなので(ショーダウンまでにどちらかを引く確率は約1/2)、結局かなり不利ではあります(66%でAKの勝ち)。
  • AT vs 99: ATはアウツが6枚あるのでドミネイトされていません。

微妙な例

  • A4 vs A2: A2はA4にドミネイトされている、と言いたいところですが、A2は2を引けなくても引き分けになる可能性が高いです。何故なら2が落ちなくてもボードに4枚5以上のカードが落ちてしまえば *1 、手札のキッカーは関係なくなり負けません。言い換えればボードに4,3が出ない限り負けず、その確率は6割弱あります。

シミュレーション

ドミネイトしている例

ヘッズアップでプリフロップで、AKoを自分が持っているときの相手の手札ごとの自分の負けない確率(勝ち+スプリット)をシミュレータで出してみました。 *2

見ての通り、ポケット以外のAx,Kxに対して勝率70%超です。これらに対してはドミネイトしていると言って良さそうです。反対に65sには58%の勝率ですから、ドミネイト出来ていません。ポケットに対しては22にすら50%も勝率がありません。

ドミネイトされている例

逆にドミネイトされやすいA2oを見てみます。意外にA9oに対しても41%の勝率を持っています。明確に勝率が30%以下となりドミネイトされていると言えるのはAJ+です。うーん、引き分けを含んでいるとはいえ意外な結果。Aヒットやボード上でペアが出来るとキッカーの意味が薄れてくるので、ミドル以下のキッカーはそこまで重要じゃないのかも。

そして嬉しい事にAxとポケットを除けば、A2はKQでも65に対してでも全てに対して互角以上に戦えます。ヘッズアップなら、お互いハイカードでショーダウンになる可能性もありますし、Aがあるだけでかなり強いということになります。


ではA2oがフロップでAヒットしたとしましょう。

せっかくヒットしたのにAT+にはドミネイトされています。それ以外も2ペアになっているケースもあるので、Aワンペアでキッカーが2では2をヒットさせない限り厳しそうです。相手のレンジが広くてKxやQxを多く含んでいれば良いのですが、スリーベットしてきた相手には到底勝てないので、そもそもそういうレンジの狭い戦いになりそうなときには初めから降りるべきということになります。

ではAも2もヒットしたら?流石に他のAxをほぼドミネイトしているので強気で攻めれそうです。ただし、このボードだとフロップでストレートが完成している場合があるのに注意。


ATも見てみましょう。AJ+に対して勝率が30%以下で、これはドミネイトされています。対してA9以下やTxに対しては、勝率が70%を超えドミネイトしています。キッカーがニアミスしている場合、ハイカード同士だとドミネイトされやすく、ローカード同士だと引き分けが多くなり差が出にくくなるということです。 *3

ドミネイトしてもされてもいない例

フィル・ゴードンの本に、スリーベットのレンジにミドル~ローのスーテッドコネクタを稀に混ぜるというのがありました。例えば56sなら相手はキッカーとしても使わなさそうなランクですからドミネイトはされにくそうです。

うーん、弱い!けど上位のホールに対しても4割程度の勝率を確保しています。弱いですが
  • フロップでヒットして、負けるはずが無いと思っている強力な手を持ったプレイヤからチップを上手に巻上げれば元が取れる
  • こちらのレンジを勘違いして相手のレンジが広がれば、こちらのマジ手でドミネイトしやすくなる
  • フロップが外れれば迷わず逃げれるので、大怪我をするリスクが低い
という利点があるため、トータルの戦略としてスーコネを少し混ぜていくのは有効な手段のようです。

ではこれがヒットしてフロップでストレートドローになったらどうでしょう?(コネクタがフロップでストレートドローになる確率は約1/4)

ヒットしていないAxに対してようやく対等な勝率になりました。ヒットしたKxには不利です。これは5や6をヒットさせても、もうKxには勝てないからです。かなり56sにとって幸運な状況のはずなのに、それでも何もヒットしていないAxと互角というのは辛いですね。その不利な分だけ完成した時には沢山相手からチップを引き出せないと元が取れません。相手がワンペアやツーペア、セット等の強い手を作ってうまくぶつかったときにチップを全部巻き上げる技術が欲しいところです。(こういうのにいつも巻き上げられるのが僕なんですがね!)

まとめ

  • ヒットしてもドミネイトされていそうな手では初めからプレイしない
    • 逆にそれでプレイするにはフロップ後の見極めの技術が必要
    • かと言ってドミネイトされにくく強い手だけでプレイしていては、手が読まれやすく弱い
  • 代わりにAやKにドミネイトされにくい手を混ぜて、読まれにくくする
    • しかし元来弱い手のためフロップがヒットしたときにインプライドオッズを高める技術が必要

結局ポストフロップの技術がないと投機的なハンドを使いこなせず、プリフロップの戦略の幅も広げられず(タイトアグレッシブ一辺倒になる)勝てないんだよなー、ってことで、ポストフロップの技術を極める旅に出たいです。

参考

http://en.wikipedia.org/wiki/Domination_(poker)

謝辞

@hiroro_sjさま @poker_japanさま
*0 : ruby -e 'n=53-4-0;m=3;s=1.0;(0..4).each{|i| s=s*(n-i-m)/(n-i)};p 1.0-s'
*1 : さらに言えば、ボードにペアが出来れば2枚5以上が落ちればいい
*2 : ここは普通にEVで出した方が良かったかも…
*3 : 手の価値がAに近づくほど指数関数的に上がっていくイメージをしちゃうけど合ってるのかな