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*攻殻機動隊 新劇場版の感想

movie book 20150716 021503
攻殻機動隊の新劇場版を見てきた。
まず、思ったよりは全然面白かった。
SFアニメ作品として、見に行く価値はあると思う。

# 太っ腹なことに冒頭12分がyoutubeで見れる。

http://www.youtube.com/watch?v=MIJ0AwmXGtc


が、その反面、攻殻機動隊という押井や神山が作った高すぎるハードルは超えていないのも事実だと思う。
僕がSF映像作品に期待するものは大きく下記の3点あるが、それぞれの観点について感想を述べてみる。

1. 空想科学(SF)としての新しいアイディアや概念
2. SFならではの新しい映像表現
3. 1.2.を活用したストーリー

まず1だが、旧劇場版では全身義体のサイボーグ、首筋の有線接続、光学迷彩、多脚戦車、擬似記憶、攻性防壁、そして核となるネットワークから高度な知的生命体が生まれる、という当時からすればブッ飛んだアイディアが満載だった(もちろんアイディア自体はコミックからだけど)。SACでも25分の1話1話にネタを仕込んでたと思う。それに対して100分の新劇場版では、義体の互換性が失われるデッドエンドという概念くらいしか目新しいものがない(と思った)。そしてその互換性に関しても妙に感じたが、これは後述する。第三世界も時代的に進んだ世界にある旧劇では、既に情報の海から意識が生まれるという一段先の未来を提示しているのだから、そりゃそういう世界もあるやろ、という感想しかない。けどリモート義体が多用されるのは面白かったかも。無線であの低遅延と高帯域と安定性を実現するって仕組みが想像つかない。

2.については、旧劇では生身と比べ圧倒的に高性能な義体に加え、光学迷彩等の技術や多脚戦車などの兵器が織りなす、従来では想像し得なかったアクション等の映像表現が発明された。新劇ではアクション自体は作りこまれていて面白かったのだけど、驚きはない気がした。優等生的な感じ。

3.については、新劇はとにかく難しい。映画ではなく4時間位かけてじっくり読む小説の複雑度なのではないか。政府や軍や東亜連合やハリマダラ、お馴染みの公安、謎の女等、組織や人が沢山出てくるが、いまいち関係が把握できず、なぜこの人と、なぜこの場所で、どういう理由で攻撃を仕掛けたのか、仕掛けられたのか、正直分からず見ている場面が多々あった。そのため、せっかく出来の良いアクションシーンでもいまいちカタルシスを得られない。
そして紛争のキーとなる義体の互換性、デッドエンドについても若干疑問が払拭できない。新規格と旧規格で争うという話だったと思うけど、技術の進歩があるかぎり新規格に移るのが当たり前で、次の新規格をどうするかで争うことはあれど、旧規格と争う意味がよく分からない。また、新しいインターフェイスを作る際に互換性も考慮するのは市場原理から言って自然な気がする。USBやEtherのように。それとも義体という互換性が重要視されるべきデバイスなのに、各社バラバラの独自規格で、すぐにデッドエンドになるのが当然という世界なのだろうか。
これに関しては、僕自身が話の筋をちゃんと分かっていないので、勘違いしている可能性もあるけど。


最後に所感。
漫画の初出は1989年、既に25年が経った。そろそろ攻殻機動隊はSFとしては流石に出涸らしではないかと。これ以上は映像化しなくても良い気がした。もっと違うSFを映像化することに労力を割いてはどうか。
しかし逆に言えば25年経っても新たに映像化する魅力がある原作というのは恐ろしすぎる。




その他ネタバレ系感想サイト。
このあたりを読んで、ああそういう意味だったのか、と納得してた。
ちなみにARISEは見てない。正確には1話は当時見たけど、今では忘却の彼方。映画を見たら、見てみるか、という気がちょっと起きた。


【ネタバレ感想】『攻殻機動隊 新劇場版』、高評価コメントが多いみたい!
http://soresore.net/archives/1032110278.html

デッドエンドと、第三世界。ゴーストの行き場は……。『攻殻機動隊 新劇場版』
http://kikainoharu.blogspot.jp/2015/06/blog-post.html

攻殻機動隊新劇場版の感想!あらすじとネタバレ
http://movienobel0000.com/?p=3218

登場人物の相関図
http://kokaku-a.jp/movie/characters.html