その名もオルゴールの森。
入場料は大人1500円(ホテルで割引券を貰って1200円)、オルゴールで1500円て高すぎない?
と思ったけど、入ってみたら予想に反してかなり面白かった。
熱海のバナナワニ園と同じくらい名前で損してる感じ。
一口にオルゴールといっても、メインは19世紀~20世紀初頭の オートマタ 全盛期のオルゴールや自動演奏機でありまして、21世紀の我々の想像のかなり斜め上を行く代物なのですな。
まずヒストリー館というところに入ると、アンティークのオルゴールが売られてますが、いきなり出くわすのが1900年アメリカ製のオルゴール。デカイ!そしてお値段648万円也。一体誰が買うんや…
ちなみにオルゴールはシリンダ型とディスク型の2種類に大別できるらしいです。これはディスク型。にしてもデカイ。オルゴールって手のひらサイズのものだとばかり思ってた。
他にも100万超えのオルゴールが沢山売られてます。
そしてホールに入るとさらに驚きの機械が!
まず、リプロデューシング(自動再演)ピアノ。今となっては自動再生なんて珍しくないんだけど、ここで展示されている機械は全て機械技術のみで電子制御は一切使っておりません(ただし動力は電気らしい。これを水車とか風車で動かしたら風流でいいな)。1926年 ドイツ ウェルテ社製だそうです。ロール紙に記録された譜面を読み取って演奏するので、ロール紙を変えれば違う曲が演奏できます。
ピアノロール(リプロデューシング・ピアノ)について
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エミール・ウェルテは、紙にピアノの各鍵盤に対応した穴をあけ、その穴を通過する空気の圧力でハンマーを動かすという画期的な仕組みの自動演奏ピアノを実用化します。(中略) ピアノロールのメーカーはウェルテ・ミニョンに続いてデュオ・アート(アメリカ・エオリアン社)やアンピコ(アメリカン・ピアノ社)など数社おこりますが、その作品リストには19世紀後半から20世紀前半にかけての大作曲家や大演奏家の名前がずらりとひしめいています。彼らの中には、エジソンやベルリナーの開発したレコードにも録音を残している者もいますが、レコードの録音には応じず、ピアノロールへの録音のみを残した者も少なくありませんDTMでお馴染みの ピアノロール って概念、ここから生まれてたんだ。さらにピアノロールのベースになっている パンチカード の歴史も面白かったり。最初は自動織機用に開発されたり、今の計算機の端末が横80文字なのもパンチカード由来だったりとか、トリビアすぎる。
ミュージックロール(ペーパー)
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標準的なものであればミュージックロールは今でも海外で製造販売をしているので、(半手作り?)注文すれば、時間はかかりますが取り寄せられるでしょう。え、まだ売ってるの!?なんでそんな需要があるんだ?と思ったけど確かに売っているぽい。
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ちょっと脱線しましたが、次にマッド感が凄いことになってる、バイオリン内蔵の自動演奏機。
人間ですら演奏が難しいバイオリンを機械に弾かせようっていうだから、正気の沙汰じゃない。実際に演奏してくれますが、そのメカメカしい動きに意表を突かれます。
それからタイタニック号に載せる予定で特別に1台だけ作ったものの、処女航海に間に合わず沈没を免れた歴史的に超貴重な自動演奏機。
これでもかと楽器を詰め込んだ賑やかな自動演奏機など、たった100年前にはこんなトンデモない機械を作る会社が沢山あって、市場も存在してたというのが凄いですね。驚きですね。
スケールに度肝を抜かれたのが、ダンスホール用に設計された自動演奏機。正面の壁一面が演奏機。デカすぎ。壁の横に取り付けられている人形たちもベルを叩いたりする楽器の一部。これも実際に演奏が聴けちゃう。元々のダンスホールより小さいホールに移設したらしいので(移設しただけで凄い話だ)音圧強め。
他にも機械人形と組み合わさったもの等が展示されてました。
歴史的には19世紀頃に機械技術の発達とともに一気に進展、しかし20世紀初頭に 蓄音機 が誕生して一気にオルゴール会社は淘汰されたみたい。ただそれでもレコードは音質が悪いので差別化はできていて、自動演奏機は富裕層向けに生き残っており、1929年までは年間2000台くらいの需要はあったらしい。
それが1929年の世界恐慌で富裕層向けの超贅沢品の需要が皆無になり、自動演奏機の歴史は突然の死を迎えてしまう。そして第二次世界大戦が終わる頃にはレコードや電子機器の発展とともにオートマタ自体が無用の長物となってしまい、二度と復活することはなかったわけですな。なんとも儚いね。
オルゴールの全盛
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オルゴールの衰退
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歴史的には19世紀中盤から数十年しか活躍できなかった自動演奏機だけど、今見るとスチームパンク的なワクワク感があるというか、もし1929年に恐慌が起きずにそのまま技術が残って進化し続けたら、あるいは蓄音機の発明があと25年遅れたら、とか、そんな今とは別の世界線ではどんな自動演奏機が生まれたんだろう、とか夢想しちゃいますね。
空気を送り込んで演奏する装置のぶ厚い音が耳の保養になります。
3回くらい行ったかな。回数も覚えていないくらい昔の話。
それにしても写真きれいですね。
確かに、特有の音がありますよねー。特有のノイズもありますし。
機械の動きとも相まって、別世界のモノに見えました。