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* 生命に関して少し調べたメモ(4) 生体膜の分子機構

tech life 20151205 182710
生体膜の分子機構: リピッドワールドが先導する生命科学

生体膜に興味が湧き読んでみたけど、かなりの良書だった。難しいので理解したのはほんの触りだけど、幾つか気になったところをメモ。

脂質の役割

生体膜は主にリン脂質から出来ている。ということで、まずは脂質が何かを知る必要があります。

脂質とは
  • 長い鎖状の炭化水素構造からなる疎水性と、極性を持つ親水性の部分を併せ持つ分子

脂質の役割
  • エネルギー源
    • 脂質は9kcal/g、糖やタンパク質は4kcal/g。糖のまま保存しておくと効率が悪いので、余った糖は脂質に変換される。
  • 生体膜の構築
    • リン脂質、糖脂質、コレステロール
  • 情報伝達
    • ステロイドなど
  • 脂溶性ビタミン
    • ビタミン A,D,E,Kなど
  • 消化補助
    • 胆汁酸

丸元康生のビジュアル栄養学+レシピ : 脂質
http://moyashiken.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-aa06.html
栄養学から見た脂質。分かりやすいです。

脂質の役割
http://www2.plala.or.jp/eddie/slim1/sl111.htm

1つの細胞内で発現するタンパク質の種類は約1万と言われていますが、脂質も数千種類作られるらしいです。いかに脂質が生命にとって重要であるかってことですね。

膜の役割

膜構造は、細胞やオルガネラ(細胞内の器官。核とかゴルジ体)を仕切ることによって、必要な酵素を膜内に留めると共に膜内のpHやイオンを調節し、生化学反応に最適な場を用意する以外にも様々な役割があります。

http://www.i-madoka.com/cell-membrane.html
ちょっと怪しいサイトですが、機能が分かりやすくまとまっています。

古細菌、原核生物の膜

生物のドメインが異なると、膜の分子構造やその生合成の仕組みも大きく異なるらしい。特に極端な環境(高温や高い塩濃度、極端なpHなど)で生きる古細菌は特殊らしい。

面白いと思ったのは、好熱性古細菌は温度の上昇によって脂質の5員環の個数が増える性質があるのだそうだけど、それを利用すると古代の堆積物から古細菌の膜脂質を抽出すると当時の海水温が推定できる(バイオマーカーとして使える)という話。

リピッドワールドの物理

脂質と水が混ざり合った時、脂質の種類やその濃度や温度等の状態によって、様々な形状(ベシクル、ミセル)が自発的に生成されるという話。水は温度によって個体液体気体と相が変わりますが、脂質が混ざると一気に複雑かつ面白い現象が起きる。流体のリアルタイムシミュレーションや可視化はある程度できるようになったけど、こういうのもシミュレートすると楽しそう(デモ的に)。

定量的粗視化分子モデルの開発/連続体モデルの評価・理論の拡張
http://simulo.apchem.nagoya-u.ac.jp/research02.html
シミュレーションの題材として面白そうですね。

http://www.tamabi.ac.jp/idd/shiro/mecha/cell/cell.html
何故か多摩美のサイトで膜に関するまとめがありました。
機構の技術というまとめ、ネタが詰まってます。

Biochemistry Online - LIPID Structure
http://employees.csbsju.edu/hjakubowski/classes/ch331/lipidstruct/oldynamicves.html
大学の講義資料かな。

化学的にも物理現象としても石鹸とか洗剤と同じかな。両親媒性の界面活性剤によって膜やミセルができて、水だけでは洗えない油を水に溶かしたり、水を両親媒性の分子が囲むことで水の表面張力を抑えこみ、シャボン玉ができたりする。

生体膜からみた生命の起源

小はバクテリアから大はクジラまで、細胞という基本単位は同じで、それは4nmの細胞膜で内外を区別している。膜がなければどんな生命も維持できない。生命の起源というとタンパク質などの部品がどう生まれたか、どうやって自己複製機能が生まれたかがテーマになりがちだが(RNAワールドとか)、それ以前に生体膜がどう生まれたかもとても重要と言える。そして、その膜がどう誕生したかは核酸などの発生のメカニズムと比べれば、比較的解析しやすいらしい。
一端は石油などの有機性堆積物の研究らしく、そこから分子構造がある程度判明している。そして、世界中から集まる堆積物試料が驚くほどの類似性を持つことが分かるらしい。そういった当時の構造を残している分子化石を調べると5億年くらい前にどういった膜をもった生命があったのかが推測できる(ただ生命誕生は30億年前)。そして、それが自然発生する条件なども推定できるようだ。

ポリプレニルリン酸が粘土鉱物上で合成される
http://www.cit.nihon-u.ac.jp/laboratorydata/kenkyu/kouennkai/reference/No.45/pdf/4-45.pdf