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*カラマーゾフの兄弟、グラン・ヴァカンス

book 20101111 233415

グラン・ヴァカンス―廃園の天使


残虐器官ゼロ年代ベストSF 1位なら2位も面白いのだろうと思い購入。
凄惨かつ清新な残酷表現は一読の価値有り。
ただ世界観の合理性に関して疑問が残る。読中読後にモヤモヤ感が残った。
そのあたりの説明責任は続刊で果たされるのだろうか。今度キューが空になったら買います。

カラマーゾフの兄弟


自分の 昔の日記 で一度読もうとして亀山郁夫訳2巻で挫折している。2年半以上前の出来事。そして何故また読もうと思ったかと言えば、一瞬キューが空になったから。

しかし読み出したら面白いんだこれが。何故過去の自分は途中で読むのを止めたのか理解できないくらいに面白いのだ。全巻読了。しかしながら2部を読み進めた時、当時止めた理由はなんとなく解った。

  • 固有名詞が把握できなくなってくる
    • 2巻までなら10数人を把握すればよいが、覚えにくいロシアの名前がそれを困難にする。土地の名前も同様に覚えるのが困難
    • 愛称との混在がそれに拍車をかける。ドミートリーの愛称→ミーチャ、カテリーナの愛称→カーチャ、アグラフェーナの愛称→グルーシェニカ
  • 人間関係が把握できなくなってくる
    • 兄弟でも腹違いだったりするし、育ちも考え方も丸っきり違う。各人固有の情報量が多くそれを把握しないと文脈が解らない
  • 2部の進行が遅い
    • 大審問官の話とゾシマの過去+説教が大部分でプロットが進まない
    • 脳や意識に対する科学や知見が溜まった現代に、200年近く昔のガチな神や魂の話をされても冷笑的に読まざるを得ず辛いというか退屈
  • ドイツ文学等からの引用がやたら多い
    • シラーの群盗がやたら引かれる。ラテン語の引用も多。そのニュアンス、伝わりませぬ

自分が読んだのは光文社古典新訳文庫で、勢いのある読みやすい文章の流れだったのだけど、さらに読みやすくするためには大幅な刷新が要ると思う。ということで日本人に読みやすくする案を考えてみた。

  • 固有名詞を日本語フレンドリに変換
    • 名前はドミートリー・カラマーゾフなら唐間 美智雄とか適当な名前に
    • 場所も寒そうな札幌とか函館に置換。シベリア送りは網走送りで
  • 時代を幕末にする
    • 農奴開放とか社会主義の革命前夜的雰囲気も予備知識がないと日本人には解り辛い
    • 日本で革命前夜といえば幕末
  • ロシア正教は仏教の話に変換
    • しかし一神教ゆえの悩みは日本人にはどうしても伝わりづらいな。大審問官は尊皇攘夷か幕府かで悩む話にする
  • 引用を古典日本文学にする
    • 平家物語とか。ラテン語の代わりに歴史的仮名遣いで雰囲気を出す。漢詩でも良い

もう全然別の小説じゃないか!

さて、結局のところこの小説の何が面白いかと言えば、人物の強烈な描き分けなんだと思った。
ヒョードルの強欲と道化、ドミートリーの猪突猛進過ぎる直情、イワンとスメルジャコフのデスノートを連想させる水面下のやり取り、ホフラコーワ婦人の止まらないお喋りとヒステリー、グルーシェニカの鬼畜染みた悪女っぷり、カテリーナの歪んだ愛、スネギリョフの卑屈さ、それに対してゾシマ長老やアレクセイの慈しみと清廉さ率直さに満ちすぎた発言、また最後における検事と弁護士の常軌を逸した弁論、結局のところ全ての登場人物は狂っている。
その狂った人々の狂気染みた台詞は個々に強烈であるが、それらが集まり作品を成し得た時に不思議なことに全てが調和し作者の思想が浮かび上がってくる。
そんなドストエフスキーの思想を伝える舞台装置としてこの小説があるのかなと思った。

村上春樹も(そんなに読んだことはないけど)全体を通してひとつの表現し難い感情というか印象をつくる作家だと思ったけど部分部分に強烈さはなかった。ドストエフスキーは部分部分に多様な強烈さを持たせつつも全体の調和も取れる点で稀有な存在なんだろう。ちなみに読んでる最中に印象に残った台詞があったらページを折ってたんだけど、余りに折り過ぎて読みづらくなったので、途中で折るの止めた。名言の多さと言えば、カイジやジョジョに通じるものもあるかもしれない。

10.11.13 02:05 owotake
とびは80年代の中短編がおもろいよ。象られた力とかのねばっこい内臓の触感と胆汁臭が秀逸。邪眼の柾悟郎とともに暗黒時代前夜のいちおし。グランバカンスははやりのイーガンな方向に風呂敷広げすぎでなんかぼけてるきがする。
ロシアは読み散らかしたけどようわからん。没入阻害要因としての固有名詞と一神教には同意。
10.11.14 01:02 mtm
ディアスポラが導入部で計算機上で自我が生まれるまでを丁寧に描写したおかげで納得感を持って話に没入できたのと比べちゃうと辛いねえ。基礎がない所に無理やり家を建てた感が残ってしまった。って1巻しか読まずに判断しちゃ駄目だと思うけど。
胆汁感ってなんすか。

ロシアは全然読んでないので、とりあえず順に罪と罰あたりから読んでくわ。けど出勤前に読んでも気が滅入るだけなのがドストエフスキーの困ったところ。
にしても、このあたりは僕は10代じゃ絶対読むの挫折してるな。。
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