前回 は、FM音源の特徴を簡単に学び、ノコギリ波もどきを作ってみた。
それだけだと、2オシレータも使ってノコギリ波も再現できないFM音源はどうなの?と思われるかもしれない。
けど、実はこの例を少し変えていくだけでもFM音源の素晴らしい特長が見えてくる。
ということで、今回はノコギリ波からおさらいする。
まずは、前回作ったFM音源のノコギリ波。
波形だけを見ても音が想像つかないと思うので、右にplayボタンを付けてみた。Chromeだと音がなるはず。
さて、では次に理想のノコギリ波を見てみる。
うん、再生するとかなり違う。本物はつんざく様な高音が出ている。耳が痛い。
ではここに音の立ち上がりや減衰を加える。いわゆるエンベロープというやつ。
全力で立ち上がって徐々に減衰させてみるとこうなる。
理想的なノコギリ波の場合。
FM音源のノコギリ波の場合。
両者とも特筆すべきことはない。
単にノコギリ波が減衰していくだけのファミコンサウンド。
この時点で、FM音源はモジュレータ(変調する側のオシレータ)にはエンベロープがない。
ここにも減衰するエンベロープを掛けたらどうなるのだろうか?
前と比べると、撥弦楽器の雰囲気が出てきた。
波形を良く見ると、変調するオシレータが減衰していくため、出力は時間とともに変調の何も掛かっていないサイン波に近づいている。つまり、倍音が時間と共に変化(減衰)している。
弦も時間と共に倍音が減衰する。弾いた瞬間は様々な倍音が乗るが、時間と共に高周波は消え弦の長さの周期の波だけになっていく。撥弦楽器の雰囲気が出てきた理由が分かる。
さらに減衰を速めてみると、より弾いた感じが出てくる。
実は、こういった倍音のダイナミックな変化こそが、FM音源の最大の魅力と言える。
この例では時間による変化だが、DX7なら音階やベロシティ等によってモジュレータのゲインが変えれる。これにより、強めに鍵盤を叩くと倍音が過剰な歪んだ音、オクターブの高い鍵盤では単純な倍音だが、低い鍵盤では複雑な倍音を持つ等、が可能になる。
参考 : http:/
アナログシンセは倍音の動的な変化は基本的にない。フィルターにエンベロープを掛けて時間的に変化させる程度の単純さ。
PCM音源は再生周波数を変えたところで倍音は変化しないから、音の高さや強弱ごとにサンプリングし直すしかない(実際はそれをやっちゃうから最強なんだけど)。
ということで、前回の記事に張った氏家さんがDX5を触る動画で言った、
「ベロシティでダイナミクスが生まれる、そのあたりがキーボーディストにめっちゃウケた」
の意味を実感できたと思う(3分あたりの発言)。
ただ、アコースティックの再現を追求すると物理モデル音源に行き着く。
http://www.youtube.com/watch?v=OYWxCrz3vmQ
だからFM音源を学ぶなら、FM音源ならではを追求した方が良い、と思う。
(逆に制約の中で如何にリアルなものを作るか、というゲームとしても面白いかもだけど)
気が向いたらもうちょっと続く( 物理音源について )。