空のCD管を配管するときには、その中に呼び線と呼ばれるワイヤー(針金)を通してくれます。自分のケーブルを通すには、呼び線にケーブルをくっつけて、反対側から引っぱるだけです。このあたりのやり方はLAN工事ドットコムが詳しいです。ただ、呼び線とケーブルの結合が弱く、引っ張っている際に千切れてしまったり、ケーブルの長さが足りなかったりすると、詰みです。CD管が短ければいいのですが、長かったり途中で曲率がきついとワイヤーを通し直すことができず、ケーブルを通すことができなくなります。
こういう場合は通線ワイヤーという剛直性の高いワイヤーを使います。これならまず確実にCD管に通すことができるので、あとは呼び線と同じで通したいケーブルを先にくっつけて通線ワイヤーを引っ張り上げれば開通です。
自分はこの通線ワイヤーを使っていますが、その剛直性の高さは凄いです。しかしこんなに高かったっけ…業者でもなければ1,2回しか使わないというのになぜこんな高いの買ったんだ…
それは良いとして、我が家は2Fのサーバ室(という名の僕のPC部屋)とリビングをCD管で繋いでいます。引っ越した直後に、そこに自分でCAT5Eのケーブルを引きました。で、最近もっと新しいケーブルに変えようと、秋葉原で買い物をしているときに突如思いましたが、これが運の尽き。25mのCAT6Aのケーブル(CAT7じゃないところがケチだね)を買って、さあ取り付けるぞ、と今までのCAT5Eのケーブルを勢い良く引き抜きました。しかしこれが最初の間違い。CAT5Eのケーブルを呼び線代わりにすべきだったのです。つまり既設のCAT5Eケーブルに新しいCAT6Aのケーブルをくっつけて、既設のCAT5Eを引っ張ればそれで終わりのはずでした。しかし引っこ抜いてしまった。これは何年ぶりかに通線ワイヤーの出番です。
しかし、ここでも大きな間違いを犯してしまいます。最初に通線ワイヤーだけを通すはずが、通線ワイヤと新しいケーブルを同時にCD管に通そうとしてしまいました。もちろんCD管の径が十分あれば問題ないのですが、通す径は太くなりますし、非常事態に片方から引っ張りながらもう片方から押し仕込むという技も使えなくなります。特に手数も省けるわけでもなくリスクだけ高くなるため、絶対やってはいけませんが、頭が弱っていたのか気付かずやってしまいました。
しかも、最初のうちはするすると入っていき、多少きついと感じる部分もありましたが、そのまま突破できそうな感じでした。CD管の全長は22mくらい、15m以上入ったでしょう、あと少しでリビングの穴からケーブルが出てくるはず!そうワクワクしながら押し込んでいったら急に詰まりました。詰まり気味の時は押したり引いたりを繰り返すとほぐれたりするので、なんとかなるだろう、と押し引きをしてましたが、どうにも前進しません。仕方ない、一度これは撤退するか、と思い引き抜こうとして焦りました。引きぬくこともできなくなっている!!
困りました。力いっぱい引っ張ってもケーブルは抜けません。無論押しても動きません。あと一歩のところなのに。2Fのサーバ室には自分の愚かさを嘲笑うかのように、CD管から10mくらいの真っ赤なステンレスの通線ワイヤーとCAT6Aのケーブルが無残に生えています。CAT5Eは抜いたので、2Fと1Fの有線の通信経路も途絶えました。最悪です。。しかもどうやれば解決できるのか、さっぱり分かりません。まさに詰んだというに相応しい状態。CD管は壁の中を通っています。唯一確実に詰まりを解消できる手は壁を破壊してCD管を切り開いて詰まりを解消することでしょうが、CD管の詰まりを解消するだけにしては払う代償が大きすぎます。一体その工事をやったらどれだけの時間と金と不便が生ずるのか。しかも、どこで詰まっているのか、壁のどこをCD管が通っているかもよく分かりません。もしかしたら、詰まったままにしてワイヤーとケーブルを切断するしか無いのかも。けどはたしてこの硬いステンレスのワイヤーはどうすりゃ切れるんだろう…きっと高価な工具が必要でしょう。考えれば考えるほど悶々としてきます。
幸いなのはダメージを受けているのが、普段閉めきっているサーバ室だということでしょう。サーバ室の中がむちゃくちゃでも、とりあえず日常生活に支障はありません。あと無線があるので1Fに有線が来てなくてもそんなに不便ではありません。が、このままではまずい。明らかにまずい。なんとかしないと。
色々調べましたが、この状況に適用できそうなものはありません。
[Q&A] CD管内の詰まりの解消方法 【OKWave】
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価格.com - 『リアスピーカをCD(PF)管で通す場合の注意点』 SONY HT-SS380 のクチコミ掲示板
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電気工事用の既設のCD管からVVFケーブルを引き抜くのに、良い方法を教えてく... - Yahoo!知恵袋
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有線LANの匠4 ~配線方法の工夫~ | Rちゃんねる
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934 CD管の呼び線にCAT6くくりつけて引っ張ってたら 引いても押しても動かなくなってしまった。 ぐぬぬ。 どっかRがきついところでもあるのかなぁ。 こういう場合、「太めの通線ワイヤでツンツンする」で合ってる? 940 スリコンスプレー買ってくる。ホームセンターで200円ぐらい。 ケーブルに付ける。 通線紐とケーブルを括ってる場所につける。 業界用語wでその部分を頭と言いますが、頭がでかいせいで引っかかってると思われます。 頭を小さくするのもテクニックです。 詰まったら、ケーブル側を思いっきり勢い付けて引っこ抜く。 ちぎれたらスチール使って通線し直しですね。
万事休す。太めのワイヤでツンツンすると言っても、太めのワイヤーを買ったら何千円もするわけで、しかもそれでうまくいくとも思えません。これはダメ元でもいいからプロに頼むしか無いと観念したけど、こんな案件普通の電設屋さんはやってくれるんだろうか?と悩みつつググったら近くに電気の便利屋デンリという会社を発見。
電気修理・配線工事・家電TVの設置、設定、配線、修理等の業務を行っております。また、地域密着型企業の為、・電球の取り替え・スイッチの交換など些細な作業も喜んで対応させていただいております。地元の電機の便利屋さんとして、かゆい所に手が届くようなきめ細かいサービスを心がけておりますので、電機全般の修理や機器の取り付け工事等のご用命はお気軽に是非弊社をご利用ください。と書いてあるので、こんな無茶なことでもとりあえずトライしてくれるのではないか、と思い連絡してみたところ、
- そういった状況は経験も無いし聞いたことも無い
- ですよねー、通線ワイヤーまで持ってるのに使い方間を違えるなんて恥ずかしすぎる!
- できるかどうかは見ないと分からないけど、やってみましょう
- リスクとしては、管の中にゴミが残ってCD管が使えなくなる可能性あり (それでも抜ければ前進なのでOKと返事)
- 費用は最大でも1万。10,20分で済むようだったら安くなります
- うまく行かなかった場合はどうなるかは聞きそびれた
当日、猫好きのおじさんと中堅な感じの若い人二人組みが1時間以上遅れましたが到着。しかも遅れる連絡自体が1時間近く遅れて、どうかと思いましたが、それどころじゃないし僕もよく会議を忘れるので人のことは言えないな、と思いつつ、早速2Fを見てもらいます。押したり引っ張ったりしてみて、とりあえず詰んでることは確認。これではどうにもならないので、1F側のCD管からワイヤーを入れてみます。1mくらいで押せなくなりました。
おじさん「あれ、もうだめだ。このCD管かなり曲がりが急なんでは?」
私「いや、一度ワイヤーで通したことはあるので、通せるはずですよ」
けど通らない。もしかしてすぐそこまで来てたのか!?けどそれが分かったところでどうにもなりません。
おじさん「これ(CD管の隣にあるコンセント4口)を外したら手を突っ込めそうだから、それでCD管を掴んで動かしたら(曲率が変わって)いけるかもなー」
なるほど!と思ったら泡断熱だったので手を突っ込むスペースもなければ、そもそも配管の後に断熱しているので、管も動かせない!吹き付け式の断熱は断熱効果は高いけど、こういう改造には弱いのが弱点だよね…しかしこれはやっぱダメなのか!?ダメ元で頼んでいるとはいえ、厳しい。
次に、2Fで若い人がガチャガチャ押したり引いたりして管とケーブルを擦れさせて音を出し、それがどのあたりで音がするか、どこまで到達しているか等を把握しようとします。
おじさん「なんか床の下からも音がする気がするなあ。おーい(と若い人を呼ぶ)。気のせいかもしれないけど下から音がするんだわ。もしかして床下通っているのかも」
私「え、てっきり壁を通っているかと思ってたけど、床下も通ってるんですか」
若い人「それならなんとかなるかもしれない、床下の入り口ってあります?」
ということで、洗面所の床下収納の口を開けます。僕も縁の下には入ったこと無いのですが、若い人は若干窮屈そうにしながらも収納から床下へと体を入れ、ライトを点け這ってその未知の暗闇へと体を進めます。あっという間に姿は見えなくなりました。基礎断熱なので、縁の下とはいえ外界とは完全に遮断された密室です。
「うわー、これは迷路だわ」
床下から声が聞こえます。しばらくするとリビングの下から声が響きました。
「ありました!」
「中で擦れる音がするので、この管で間違いないです」
なんと問題のCD管は本当に床下を通っていました。しかも断熱材に囲まれておらず剥き出しのようです。これはいけるかもしれない!!
ここで床下のCD管を切ってケーブルの端を取り出し、1F側から通線ワイヤーを入れてケーブルと固定、1Fから引っ張り上げる作戦に移行します。CD管は切っても後でビニールテープで固定しておけば問題ありません。これはいけるかもしれない!!1Fからの引っ張りと床下からの引っ張りの二人がかりで突っかかるところもありましたが、強引に引き上げに成功!!遂にCAT6Aケーブルが1Fに出てきました!感動の瞬間です。この瞬間をどれだけ待ちわびていたことか!
あとは通線ワイヤーを救出すれば終わり。これは2Fから引き上げれば良いでしょう、ということでおじさんが2Fで引き上げていきますが、なんと途中で詰まってしまいます。LANケーブルと絡まった?最後の最後で裏ボスが残っていましたか。とりあえずケーブル含めて引き上げちゃうのも今ならいけそうだから、それからやり直しかな?と個人的には思ったのですが、もっと効率的な方法をおじさんたちは取りました。通線ワイヤーは丸くなっている頭の部分があるのですが、それが1Fに向いています。だから2Fから引き上げようとするとそれがどこかで絡まるけど、床下からなら回収できるでしょ、とのこと。その推測はあたっていたようで、床下から引っ張り、2Fから押し込む連携プレイで無事通線ワイヤーも回収。ケーブルがダメージを受けて断線していないかが少し心配でしたが、無事リンクを確認。一件落着!!
撤収まで含めて約1時間でした。
料金は
配線入れなおし | \6000 |
出張費 | \1500 |
消費税 | \600 |
計 | \8100 |
家建てたとき にも思ったし、こういった設備関係のプロの人の仕事を間近で見る度に思うのだけど、プロの仕事ってのはそれ自体が一種のエンターテイメントな気がします。長年の経験や知識や勘、器用さ、手際の良さ、行動力で、素人には想像もできない手法と速度で問題を解決していく様子は、結果云々抜きにしてそれ自体が面白い。しかも今回は成功するか失敗するか分からない状態から始まったので、なんだかスポーツの試合を見ているのに近い感覚。色々とお金と時間は掛かってしまったけど、それ相応のコンテンツは楽しめたと言えるから、この失敗も悪いもんじゃなかったかもなー、等と終わってしまえば呑気なもので、またやらかしそうだな…
さて、最後に反省点
- 久しぶりに何かをするときは、うろ覚えでやり始めるのではなく、まず落ち着いて手順を確認してから作業する
- 困ったときはその道のプロを探して任せる
- (CD管の詰まりは)そもそも一人で解決できない可能性が高い
- 家を建てるときは、念の為にCD管の太さと曲率にもチェックを入れよう