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*ゼロ戦と戦艦大和におけるプロジェクト成功の難しさに関する雑感

book 20160425 002110
同じ旧日本海軍が開発。
どちらも海外の後追いで、目標はそれを凌駕した性能の実現。
多くの技術者が多大な努力・犠牲を払い、どちらもそれを達成した。

しかし結果は180度異なる。
ゼロ戦は圧倒的な戦績を残し、戦争のやり方を変えた稀有な存在となった。
対して、大和は全く成果を上げられず、壮絶な人的物的資源の無駄となった。
 

圧倒的な性能の飛行機を作ると何が起きるのか、
圧倒的な性能の戦艦を作ると何が起きるのか、
誰も本当は分かっていなかった。
作っていた人たちもそれを指示した人たちも。


いや、大和は作る前からに無駄になることが分かっていた人は多かったのだ。
(参考: 航空主兵論大艦巨砲主義 )

しかし動き出したプロジェクトは止められない。
組織が巨大であればあるほど、期間が長ければ長いほど、プロジェクトの質量は大きい。
つまり動き出すために莫大なエネルギーが要るし、一度速度に乗ってしまったら、
停止させるためにも莫大なエネルギーが要る。
停止させるということは、今まで掛けた資源を損切りすることになる。
相当な覚悟が必要となる。


また、組織というのは価値観(評価関数、ビジョンと言い換えても良い)を共有するから一つの目標に向かえる。
価値観を共有しているから一人ひとりが同じ目標に向かって走り、
一つのプロジェクトを組織として遂行できる状態になれる。
逆に言えば、全員の価値観の平均が組織の価値観とも言える。
故にトップ一人の価値観が変わったからといって、末端までそれが行き渡らなければ組織は変わらない。
では一人ひとりが信じている価値観を否定し、方向転換させ、
また新しい目標に向かって走らせるのにどれだけのエネルギーが必要なのだろうか。


日本海軍は、ミッドウェー海戦の敗北、第一機動艦隊の壊滅という致命的な代償をもって初めて
大艦巨砲主義という価値観を修正することができた(手遅れだったが)。
多くの大企業も同様で、成功していればしているほど、大敗北を喫しないかぎり
考えを改めることが出来ない。


単純に小回りの効く組織は強いというが、大組織になれば小回りが効かなくなるのは必然。
同じ止まる、曲がるといった動作も、蜂と象では全く別の考え方が必要となるのと同じだ。
例えば、大きな車は急には曲がれない。
十分にブレーキを踏み、速度を落とし、荷重をフロントに持って行ってから徐々にハンドルを切り、
アクセスを開けていかねばならない。
そういった感覚と、実際にハンドルとアクセルとブレーキを御す力が大組織のトップには必要なのだろう。


あるいは、創業者のように神格化されたような圧倒的なカリスマ性と権力があれば、
荷重を気にせずに急ハンドルを切っても問題がないかもしれない。
だとすれば、創業者が死去してダメな会社になっていくパターンは枚挙に暇がないが、
それも必然なのか。


上手くいくプロジェクトとそうでないプロジェクトの違いって何なんだろうな、
と以前SHIROBAKOを見た時に思ったことを思い出したのだった。



吉村昭は何を読んでも面白いけど、この2冊も間違いない。
黒部ダムを作った人たちの 高熱隧道 もオススメ。


凄い昔 に読んだことあるけど、あまり記憶に残ってない。


アニメ業界のプロジェクト進行の様子。業界は違えど何かを作る現場はカオスなんだなーと妙に納得。にしても、プロジェクトが上手くいく必要条件(十分ではない)は、チーム皆に熱意がある、主人公のように優秀な調整役がいる、ってことは間違いない。