岸信介という名前は教科書でみたことはあるものの、昔総理大臣をしていた人くらいの認識だった。しかしなぜこの本を手にとったかといえば帯やポップが強烈だったから。たしか
- 「金は濾過して使え」(岸信介の名言)
- 「昭和の妖怪」
- 「安倍晋三の背景を理解する上で欠かせない、祖父 岸信介の功罪」
というような意味のことが書いてあったのだと思う。
面白そうじゃないですか。今の政治を理解するためには、過去の政治・歴史を知らなければいけない。なぜ、この政治家はこういう考えを持っているのか、その背景は何なのか、なぜこういった政治のシステムになっているのか、なぜ日本の経済の仕組みはこうなっているのか?日々暮らしてニュースを見るだけで疑問は多い。
なんとも日本の政治経済は不思議だ。日本の経済システムは戦時中に作られた 戦時経済のまま だったし、かつてあった 日本興業銀行 や日本銀行による銀行を頂点とした財界の特殊性、日本にしか無い経団連という財界の連携を取る仕組み、だいぶアメリカ化してきたとはいえなんとも独自なシステムである。
そして政治も不思議だ。1955年から始まった自民党の実質的な独裁政治である55年体制、強力な官僚機構、そして政治官僚経済界の酷い癒着。戦争を放棄すると明言しつつも強力な軍隊を持ち、自国領内に大量の米軍が戦後70年たった今も駐留し続けている。今はだいぶ崩れてはいる部分もあるが、まだその特殊性を日本の政治は残している。
こうした現代日本のシステムを決定づけ、そして死して今なおその思想が現在の政治に影響を与えているという戦後最大のキーパーソンが、実は岸信介なのではないか、というのがこの本を読んだ感想だ。いや、ちょっと言い過ぎたか。けど彼抜きでは戦後の日本は語れないのは確かだと思った。